『自転車コミュニティビジネス』近藤隆二郎編(2013)学芸出版社

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管理者Sの読書録 #15

自転車を活用したビジネス事例集

自動車は、自分の姿に合わせて都市を形づくることによって徒歩や自転車での移動を締め出す(根源的独占)。そこで、コンヴィヴィアリティ(自立共生)のための道具として自転車が推奨されている。(中略)自動車は、「みんな」で「乗合」っていたものを、「わたし」だけで自由に移動できるという独善的な存在なのである。自動車のようなパワーツールは人間を隷属させるが、身体の延長でもあるハンドツールの自転車は、人間の創造性を発揮させて自由をもたらすものであり、コミュニティビジネスの可能性を強く秘めているのだ。

近藤隆二郎編(2013)『自転車コミュニティビジネス』

本書『自転車コミュニティビジネス』は、実践的に自転車を通じたコミュニティビジネスを展開している団体にフォーカスした、日本国内の事例集です。「コミュニティビジネス」ですから、観光産業に関する事項のみならず、福祉用の自転車利用に関するビジネス、自転車の二次利用に関するビジネス、駐輪システムに関するビジネス、ハード事業に関するビジネスなど、多岐にわたる事例が紹介されていたのが本書の特徴です。

他方で本書は、単に成功事例を示すだけでなく、実際の問題点にまで踏み込んで記述されていました。自転車ビジネスに潜在性があるといっても、実際にはどのビジネスもかなり逼迫しているようで、とりわけ自転車タクシーは採算が取れないことから、撤退に追い込まれる事業者が後を絶たないとのことでした。

またサイクルツーリズムに関しては、「ツール・ド・○○」などのイベント型と、山田拓氏の「美ら地球」が展開するような高価格高付加価値のツアー事業の二極化が進んでいるとのことが指摘されていました。逆に言えば、単にレンタサイクルをする、サイクリングロードを整備するだけでは、地域への経済効果は見込めないということでしょう。実際にサイクルツーリズムを進めていく上では、富裕層を中心とした財布の紐の緩い層をターゲットに絞り、「徹底したホスピタリティ」を講じたツアーを用意しなければ、持続可能性はないものと思われます(京都府の事例)。

個人的に興味を持ったのは、サイクルツーリズムをめぐる大手旅行代理店の反応で、その多くが「(ツアーを)『組みにくい』『マスが期待できない』ということで、失速しそうになっている」とのことです。やはり、サイクルツーリズムを展開するのはむつかしいのかなと…

『自転車コミュニティビジネス: エコに楽しく地域を変える』(近藤隆二郎)の感想(5レビュー) - ブクログ
『自転車コミュニティビジネス: エコに楽しく地域を変える』(近藤隆二郎) のみんなのレビュー・感想ページです(5レビュー)。作品紹介・あらすじ:空前の自転車ブームを受けて新しい自転車ビジネスが次々におこり、地域を変え始めている。「自転車の移動力を活かす」「自転車の楽しみ方を提案する」「よりよい自転車社会をデザインする」...
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