『若者と地域をつくる』宮口侗廸・木下勇・佐久間康富・筒井一伸編(2010)原書房

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管理者Sの読書録 #40

農山村における地域づくりインターンの体験記

地域づくりインターンは都市農村交流のひとつであるが、これまでの都市農村交流とは根本的にその考え方が異なる。1990年代以降、都市農村交流といえばグリーンツーリズムなどが注目され、「交流ビジネス」の言葉にも象徴されるように「交流」を基盤とした産業をいかに発展させ、経済的効果を得るかという点に重きがおかれてきた。これに対して地域づくりインターンは農山村の地域づくり活動の主体との交流を通して、都市の若者が自らの労働力・知識・技術を提供し、地域づくり活動にかかわることをめざしたものである。そのためこれまでの都市農村交流とは明確に区別され、「協働の段階」の都市農村交流として位置づけられるものである。

宮口侗廸・木下勇・佐久間康富・筒井一伸編(2010)『若者と地域をつくる』(p. 9)

本書『若者と地域をつくる』は、学内のある教員推薦を受けるために読んだ想い出の(?)一冊。ブログ更新が滞ってしまったのも、教員推薦を受けるために勉強していたことが理由(修論の提出も大変だったが)。まあ、結局推薦を受けることができず、来年も引き続き「職なし大学院生」として励むことになった。人生で初めて「お祈りメール」をもらったな…

本書の執筆者が27名であることから分かる通り、大学教員、役場職員、民間企業、参加学生など、幅広い識者によって、それぞれの立場から「地域づくりインターン」の現状や課題点を議論している点に、本書の面白みがあった。また地域事例も豊富で、地域づくりが一筋縄にいかないことがよく伝わってくる。

本書を通底する核は、地域づくりを通した学生と地域住民の「協働」のあり方で、特に「よそ者」「田舎ビギナー」である学生が地域に参画することで、閉塞的で、硬直化した地域コミュニティに風穴を開けられる可能性がある旨の行論がかなり取られていた印象を持つ。しかしその一方で、「学生の『提言』は即効性があるわけではなく、実現可能性の観点からも十分なものではない(p. 42)」など、あくまで学生が地域に与える影響は間接的なものであるとの留保をつけている点も本書の特徴であった。したがって、学生が与えた外部刺激をいかに地域側が受容していくのか、問題解決方法として体得していくのかが問われる行論であったといえる。

大学教育が果たすべき「地域貢献」の呼び声のもと、日本全国の大学において、地域インターンシップに似たるプログラムが実施されている。それに関わる大学教員の苦労が偲ばれるが、その一方で、かかる取り組みがアカデミックな議論に結びつきにくいのがさらに酷である。本書を読みながら、特にそのことを強く感じた。第4章は地域づくりインターンをめぐる理論構築の章と思うが、本当にありきたりな精神論しか書かれていない。

また、「活気や積極性、若い感性などのワカモノならではの要素や、ヨソモノ視点で地域を見ることができる(p. 210)」ことを地域インターンシップ実施の意義として挙げるが、果たしてこんな精神論だけで、地域が学生を受け入れようと思うのかは甚だ疑問である。地域インターンシップの中止理由として、「予想以上の経費負担」や「思うような成果が得られなかった」が挙げられているが(pp. 117-120)、つまるところ、短期間だけで何の成果も残さない学生の面倒を見るのは大変だし、お金もかかるからイヤだというのが、地域側の本音でないかと思う。こうした、漠然としたメリットのために学生の面倒を見るほど、地域も暇ではないはずである。

本書に限らないが、こうした地域づくり系の研究(?)にあって、自らの関与体験にもとづく成功事例の紹介と、「鏡効果」や「地域アイデンティティ」といった実体のない効用を持ち出してきて理論付ける行論が、あまりにも目に余る。言い分は種々あろうが、やはり研究者として学術の場で議論するのであれば、地域とある程度の距離を置いた上で分析することが求められるものと思う。少なからず、地域インターンシップの事例紹介や成功体験記、地域づくりマニュアルの類いは、どうもアカデミックに見えないというか、議論が表層的すぎてつまらない。

『若者と地域をつくる―地域づくりインターンに学ぶ学生と農山村の協働』(宮口〓@42B8@廸)の感想(1レビュー) - ブクログ
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