『日本列島創生論』石破茂(2017)新潮新書

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管理者Sの読書録 #41

初代地方創生担当大臣が見る国土論

国が地方を変えるのではなく、地方の真摯な取り組みこそが国を変える。そのような考え方を共有すべきである。これが初代の地方創生担当大臣をつとめた私の結論です。別の言い方をすれば、「地方創生」の集積が、日本全国の「創生」になる、ということです。

石破茂(2017)『日本列島創生論』p. 11

ゼミ管理者が石破さんを初めて知ったのは、彼が福田内閣時に防衛大臣をしていた頃だったように記憶する。やけにゆっくり話をする人だなあ、というのが第一印象だった。少しずつ政治のことが分かってくると、自民党らしくない貴重なリベラル派の政治家だとも思うようになった(そのことでネットでは叩かれまくっているが)。最近はあまり好きじゃないが、地方創生担当大臣をしていた頃までの石破さんは、わりと自分の中で好感度が高かったように思う。

本書『日本列島創生論』は、彼が地方創生担当大臣を務めていた時に感じたこと、あるいは実際に政策に移したことなどについて手際よくまとまった一冊。特に、地方の急速な人口減少と積極的な地方分権の推進に関しては、強く問題意識を持っていたようで、RESASの開発や省庁の地方移転など、その政治理念に則った具体的な政策実行が提示されていた(総務省統計局が和歌山にあるのを本書で初めて知った)。

また石破さんが、地方創生にまつわる事象についてよく「勉強」されているのも伝わってきた。特に観光をめぐる議論などは、アトキンソン氏や山田圭一郎氏が言ってそうなことを、そのまま書いているようにしか思えないほどである。また、丸亀商店街や海士町、森のようちえんなど、話題になっている地域やトピックを伝聞形式で記述している。ここらに明るい人に聞いたのか、ご自分で本を読まれたのかは分からないが、「聞く力」で人の話をしっかり聞き、かつよく勉強されてるなという印象を受けた。

その一方で、もう一歩足りないというか、地方創生に対する自分自身の提言が少なかったように思う。学者や役人ならまだしも、節々に抽象的な理想論が入り混じっており、政治家としてもう少し具体的な政策提言がほしかったなというのが率直な感想ではある。人から聴いたことや本で読んだことを、そのまま世に発信してしまっている感がどうしても否めない。石破さんも、結局何をやれば良いのかよく分からなかったじゃないかと感じてしまった。

とりとめもないが、本書で竹下登氏が登場していた下りは面白かった。各自治体に1億円をばらまいておいて、「これによってその地域の知恵と力がわかるんだわね(p. 58)」は、あまりに無責任な感じがする。馬鹿でかいハコモノで、使用実態に合わない公開天文台の建設ラッシュが起こった状況を、氏はいかに見ていたのだろうか。いずれにせよ、本書における竹下総理との会話は、今後色々と引用できそうだ。

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