天体望遠鏡の接眼部にデジタルカメラや専用のイメージセンサーを取り付け、パソコンやスマートホンのディスプレーに画像を表示して行う天体観察。一度に多人数による観察もできる。
デジタル大辞泉(小学館)
上記は電視観望を辞書で検索した結果です。デジタル版とはいえ、こんなニッチな言葉まで立項されているのはびっくりです。
電視観望とは、従来の望遠鏡を用いた天体観測とは異なり、望遠鏡にカメラを取り付け/組み込み、眼ではなくカメラに映った映像をを観察する観望方法。
近年、カメラの低価格化とソフトウェア技術、PCの処理速度の向上等が合わさり、簡単に実現できるようになり、非常に流行っている。
現在、広まっている最中であり、メリット・デメリットが議論されているが、アストロツーリズムに大きな影響を与える技術だと思われるので、メモとしてまとめてみた。体験した人がどう感じているのかなど、今後の研究が求めらる。
メリット
観察者サイド
- ライブスタック(多数の画像をその場で重ね合わせること)ができるため、ノイズを軽減した綺麗な天体画像が見られる
- 画面に表示されるので、覗き待ちがへる。それにより、一人当たりの観察時間が増える。
- 複数人で同時に同じものが見られる。楽しみが共有できる。
- 従来の望遠鏡では見にくかった天体が見えるようになる(都会でDeep Sky系を見たり、色が見えたり)
- 画面を写真に撮ったり、画面をキャプチャーすることですぐにSNSで共有できる
- 図鑑で見たものと似た画像が見られる
運営サイド
- そのままインターネット配信が行える、記録を残すことができる。
- デジタルデータであるため、共有、加工がしやすい。
- (eVscopeの場合)天文機材に深い知識がなくても扱える。
デメリット・課題
観察者サイド
- リアルな望遠鏡を覗くのに比べると、体験が弱いと考えられている
- 自分で苦労して導入し、天体が見られるなどの感動が得にくい
運営サイド
- 自動導入などを使用すると、機材への知識が少なくなる
- カメラ組込型だと、レンズを交換し倍率を変えるなどができず、応用が効かない
- 電子機器が多くなるため、従来のものに比べると故障しやすい。また進化が早いと考えられ、陳腐化が早い。
留意点
電視観望はあくまでも天体を観測する手段にほかならないため、見方が変わった場合はガイドの仕方や、知識を変えていく必要がある。
また、電視観望も眼視観望もそれぞれのメリット・デメリットがるので、両者の使い分けが大事になるだろう。
機材・ソフトウェア
基本的には、カメラ、望遠鏡、キャプチャーソフト(アプリ)、赤道儀が必要。一体化していたり、連携していたりするため、非常に複雑。
よく使用されるカメラ
大きく分けて望遠鏡に後付けするカメラ、カメラ付きの望遠鏡の2種類がある。
望遠鏡につけるカメラ
ZWO社のカメラが有名。冷却モデル、非冷却モデル、センサーサイズ等でさまざまな種類のカメラがある。
一眼レフ、ミラーレスカメラを使用する方法もある(自己責任)。ソフトウェアとの相性もあるが、お手持ちのカメラで可能なため、気軽に試せるだろう。
カメラ付き望遠鏡
Unistellar社のeVscopeが最も有名。eVscope 2は約60万円、eQuinoxは約37万円。これだけあれば観測が可能なため、一番気軽に観望が可能。天文、機材の知識がなくても使用できる。
よく使用されるソフトウェア
ZWO社製のドライバー、ソフトウェア、マニュアルなど。
Sharpcapは天文用カメラのキャプチャツールです。さまざまなカメラ映像のゲインを調整したり、できる。「望遠鏡につけるカメラ」を使用する場合このようなソフトウェアは必須。対応カメラや、対応スペック等はマニュアル参照。ただし日本語マニュアルはVer.3.2
ASCOM(AStronomy Common Object Model)は各種カメラ及び、各種ソフトウェアが連携できるように決められた、天文用の規格。もちろん前述のSharpCapやZWOは対応している。
参考文献
電視観望の普及(宮川 治 東京大学宇宙線研究所天文教育) 天文教育 34 (3), 4-10, 2022-05
銀河の渦巻きが都会で見える! 電視観望用望遠鏡による新しい天体観望会 渡部義弥 天文月報 114 (9), 583-591, 2021-09
電視観望望遠鏡 eVscope の衝撃 渡部 義弥 天文教育 34 (3), 11-14, 2022-05