天体望遠鏡の接眼部にデジタルカメラや専用のイメージセンサーを取り付け、パソコンやスマートホンのディスプレーに画像を表示して行う天体観察。一度に多人数による観察もできる。
デジタル大辞泉(小学館)
天体望遠鏡で捉えた星の光を、接眼レンズ(アイピース)で直接覗くのではなく、高感度なCMOSカメラで捉えてスマホやタブレットの画面に映し出すのが「電視観望」である。
2022年頃までは、望遠鏡・架台・カメラ・PCを個別に組み合わせる必要があり、ややハードルの高い趣味であった。しかし、2025年現在は、これらが全て一体化した「スマート望遠鏡」が爆発的に普及。誰でもボタン一つで、肉眼では見えない淡い星雲や銀河を、色彩豊かに描き出せる時代となった。
現在、広まっている最中であり、メリット・デメリットが議論されているが、アストロツーリズムに大きな影響を与える技術だと思われるので、メモとしてまとめてみた。体験した人がどう感じているのかなど、今後の研究が求めらる。

メリット
観察者サイド
- ライブスタック(多数の画像をその場で重ね合わせること)ができるため、ノイズを軽減した綺麗な天体画像が見られる
- 画面に表示されるので、覗き待ちがへる。それにより、一人当たりの観察時間が増える。
- 複数人で同時に同じものが見られる。楽しみが共有できる。
- 従来の望遠鏡では見にくかった天体が見えるようになる(都会でDeep Sky系を見たり、色が見えたり)
- 画面を写真に撮ったり、画面をキャプチャーすることですぐにSNSで共有できる
- 図鑑で見たものと似た画像が見られる
運営サイド
- そのままインターネット配信が行える、記録を残すことができる。
- デジタルデータであるため、共有、加工がしやすい。
- (eVscopeの場合)天文機材に深い知識がなくても扱える。
デメリット・課題
観察者サイド
- リアルな望遠鏡を覗くのに比べると、体験が弱いと考えられている
- 自分で苦労して導入し、天体が見られるなどの感動が得にくい
運営サイド
- 自動導入などを使用すると、機材への知識が少なくなる
- カメラ組込型だと、レンズを交換し倍率を変えるなどができず、応用が効かない
- 電子機器が多くなるため、従来のものに比べると故障しやすい。また進化が早いと考えられ、陳腐化が早い。
留意点
電視観望はあくまでも天体を観測する手段にほかならないため、見方が変わった場合はガイドの仕方や、知識を変えていく必要がある。
また、電視観望も眼視観望もそれぞれのメリット・デメリットがるので、両者の使い分けが大事になるだろう。
2025年版:機材について
現在は、目的に応じて大きく2つのスタイルに分かれる。
- スマート望遠鏡(オールインワン型):初心者や観光コンテンツとして導入する場合の最適解。設置から自動導入、撮影までをアプリ完結で行える。
- システム構築型:従来の望遠鏡にCMOSカメラ(ZWO社製など)を組み合わせる方法。既存の機材を活かしたい場合や、より高精細な画像を目指すファン向け。
主要スマート望遠鏡 比較表
2025年現在、市場でシェアの高いモデルの比較である。
| モデル名 | 口径 / 焦点距離 | 重量 | 価格(税込目安) | 特徴・ターゲット |
| ZWO Seestar S30 | 30mm / 150mm | 約1.6kg | 約60,000円 | 2024年登場。超軽量・安価で入門に最適。 |
| ZWO Seestar S50 | 50mm / 250mm | 約3.0kg | 約85,000円 | 圧倒的シェア。フィルター内蔵で多機能。 |
| Dwarf III | 35mm / 150mm | 約1.3kg | 約85,000円 | 広角・望遠の2眼式。AI追尾機能が強力。 |
| Unistellar Odyssey | 85mm / 320mm | 約4.0kg | 約400,000円〜 | 反射式。接眼部搭載モデルあり。 |
| Vaonis Vespera II | 50mm / 250mm | 約5.0kg | 約300,000円 | 高画質センサーと洗練されたデザイン。 |
| Celestron Origin | 152mm / 335mm | 約19kg | 約800,000円 | F2.2の明るい光学系。 |
システム構築型
望遠鏡につけるカメラ
ZWO社のカメラが有名。冷却モデル、非冷却モデル、センサーサイズ等でさまざまな種類のカメラがある。
一眼レフ、ミラーレスカメラを使用する方法もある(自己責任)。ソフトウェアとの相性もあるが、お手持ちのカメラで可能なため、気軽に試せるだろう。
よく使用されるソフトウェア
ZWO社製のドライバー、ソフトウェア、マニュアルなど。
Sharpcapは天文用カメラのキャプチャツールです。さまざまなカメラ映像のゲインを調整したり、できる。「望遠鏡につけるカメラ」を使用する場合このようなソフトウェアは必須。対応カメラや、対応スペック等はマニュアル参照。ただし日本語マニュアルはVer.3.2
ASCOM(AStronomy Common Object Model)は各種カメラ及び、各種ソフトウェアが連携できるように決められた、天文用の規格。もちろん前述のSharpCapやZWOは対応している。
参考文献
電視観望の普及(宮川 治 東京大学宇宙線研究所天文教育) 天文教育 34 (3), 4-10, 2022-05
銀河の渦巻きが都会で見える! 電視観望用望遠鏡による新しい天体観望会 渡部義弥 天文月報 114 (9), 583-591, 2021-09
電視観望望遠鏡 eVscope の衝撃 渡部 義弥 天文教育 34 (3), 11-14, 2022-05







